
オレゴン州を含むアメリカ西部産の針葉樹は、明確に定義された木材の等級に基づいて、数百種類もの木材製品に加工されます。こうした等級は、製品を照会する際の利便性と共に、買い手、売り手、設計技師が木材の品質を決定する上での信頼のおける基準となることを目指して、ほぼ一世紀にわたり改良されてきました。樹種と等級は、使用目的別に大まかに分類されることがあります。
建築用の構造材等級
ダグラス・ファー・ラーチ、ヘムファーとスプルース・パイン・ファーの組み合わせで、軽量の枠組材、構造用軽量枠組材、構造用梁、板張り等に使用されます。米国では、厚さ38x89mmで、幅が38mm以上の製品は、ディメンション・ランバーと呼ばれています。これより大きなサイズは重量木材とされています。梁とけた用は厚さ114mm以上で、幅は厚さよりも51mm以上大きくなっています。柱と大断面木材用は、114x114mm以上で、幅は厚さより51mm以下になります。これらの構造材は高い工業用価値を有します。一般的な用途としては、枠組材、エンジニアード・ウッド製品、積層材、コンクリート枠材、足場材料、梁、円柱等に利用されます。
輸出先のニーズに合わせた特別な構造上の等級とサイズの製品は、RIS、PLIB、WCLIB、WWPAの管理下で米国内の製材所が加工および出荷しています。製品は未乾燥のまま出荷する場合と、キルン乾燥させてから出荷する場合があります。ベビー・スクエア、Jグレード、スキャントリングス(小角材)と一般に呼ばれる様々な海外市場向けの製品は、買い手と売り手の間の合意書を通じて入手可能です。
強度よりも外観を重視した等級
強度よりも美観が優先される状況で、様々な用途に利用されます。強度が特別に重視される製品を除いて、負荷に対する強度はほとんどの場合考慮されていません。すべての樹種が揃っており、通常は樹種別に出荷されますが、様々な樹種の組み合わせをセットで購入する方法もあります。多様な木肌と木目を持つ西部産の樹種は、最高級のクリア材から経済的な等級まで広い範囲で調達できます。樹種の中には腐食に強く、外気にさらされた環境では時の経過とともに銀色やグレーのサビがつき、自然の趣が出るものもあります。用途としては、パネリング、外装材、棚材、フローリング、家具、装飾設備等があります。
工業用材並びに再加工材として利用される等級
この用途の製品は様々な樹種から製造されますが、ダグラス・ファー、ヘムファー、ボンデローサ・パイン、シュガー・パインが主なものです。ファクトリー&ショップ級は、小さなサイズに再加工され、他製品を製造する用途で利用されます。これらの樹種は加工が容易で、釘やネジがよく効き、美しく仕上がります。用途としては、キャビネット、高級家具、窓、ドア部材、床材、モールディング、特製品、鉛筆、木工器具等です。工業用としては、木型、梱包用材、箱、パレット、杭、建築用枠材等に使われます。
カリフォルニア・レッドウッド等級
商業目的に栽培され、本質的に耐久性に優れたオレゴン州南部および北カリフォルニア原産のセコイア・セムペルヴィレンス専用です。外見の美しさと耐久性に基づいて等級付けされます。
特別輸出向け等級
多くのメーカーは、輸出先の規則による等級とサイズの木材製品を提供しています。一方、国際市場で広く取り引きされている種類以外の輸出向け等級に関しては、売り手と買い手の間の合意に基づきます。
木材製品取引の初期には、地域ごとに独立した格付機関が、それぞれの樹種の等級を開発していました。その後、近代建築の普及と建築条例によって資材の標準化が必要になりました。1970年代、ディメンション・ランバーの全米等級規則に準拠して構造用木材製品の等級とサイズが標準化され、樹種を組み合わせたいくつかのカテゴリーに分類されました。ただし、スペシャリティ等級や外見による等級づけが行われる非構造材については、公認の格付機関によって樹種別に分類された、地域ごとのさまざまな等級が与えられています。
- 太平洋木材検査機関(PLIB)
- 西海岸木材検査機関(WCLIB)
- 西部木材製品協会(WWPA)
- カリフォルニア・レッドウッド協会(CRA)の一部門であるレッドウッド検査サービス(RIS)
上記4つの格付機関は、アメリカ合衆国商務省の管轄下、米国木材規格委員会(ALSC)によって認定されています。WCLIB、WWPA、RISは規格書を発行することのできる機関として正式に認可を受けており、米国針葉樹材規格PS-20に準拠すると認定された等級基準を発行できる全米の6機関の中の3つです。この製品規格は、木材が等級格付マークに表示されたサイズ、等級、設計値と一致することを確約するための手段です。
以上の4つの格付機関はいずれも、ディメンション・ランバーの全米等級規則(NGR)に則して構造用材の等級づけと検査サービスを提供することにおいて正式認可を受けています。その内、PLIB、WCLIB、WWPAはカナダ木材規格認定委員会の認可も受けており、カナダの全国木材等級委員会(NLGA)が出版した「カナダ産木材の標準等級規則」に則して、等級検査サービスを提供することができます。
PLIB
1903年設立の太平洋木材検査機関(PLIB)は、民間による非営利団体の木材品質管理検査機関です。 PLIBは西海岸の針葉樹材を対象とした輸出「R」リスト等級と仕上げ基準で最もよく知られていますが、これは針葉樹材の国際取引において最も歴史のあり、最も広く利用されている基準の1つです。
PLIBはオレゴン西部、ワシントン、力ナダのブリティッシュ・コロンビアにある40以上の針葉樹材メーカーに対し、買売契約の明細に従って等級付けと検査を行っています。
PLIBはALSC並びにカナダ木材規格認定委員会の認可を受けて、NGR、WCLIB、WWPA、RIS、NLGAの規則に準拠した木材の監査と共に、縦継ぎ材や巾はぎ材のようなグルード・プロダクツや機械強度規格材の管理を行っています。
WCLIB
西海岸木材検査機関(WCLIB)は、北西部の4つの協会が合併して1911年に創立され、西海岸製材業者協会(WCLA)が発展したものです。 40年後、WCLAの独立子会社として等級部門が設立され、1968年には西海岸木材検査機関が独立組織としてスタートしました。現在のWCLIBは、主に米国北西部に広がる110以上の製材所と再加工業者にサービスを提供しています。「西海岸産木材の標準等級」出版を通じた均一な等級規格の開発および維持という主目標に加え、等級管理、再検査および一時的検査、等級専門家教育、一般的、技術的製品サポートを提供しています。 WCLIBはALSC並びにカナダ木材標準認定委員会の認可を受け、NGR、WCLIB、NLGA、WWPA、RISの規則に即した木材の監査と共に、グルード・プロダクツや機械強度規格材の管理も行っています。
WWPA
西部木材製品協会(WWPA)は、その前身組織が1906年に設立された、世界でも最も古く、最大規模を誇る民間非営利木材同業者団体の1つです。アメリカ西部の12州とアラスカに散在する130以上の製材所を代表しています。WWPAは認可を受けて規則を設定し、等級付けと検査を行うという最も重要な品質管理業務に加え、会員メーカー向けの経済分析と技術サポート、そしてエンジニア、建築家、建設会社向けの製品のサポートと製品情報、業界全般のビジネス情報サービスも行っています。WWPA はALSC並びにカナダ木材標準認定委員会の認可を受けて、NGR、WWPA、RIS、NLGAの規則に準拠した木材の監督サービスを提供すると共にグルード・プロダクツや機械強度規格材の管理を行っています。
California Redwood Association
レッドウッドの等級規格であるカリフォルニア・レッドウッド材の標準仕様は、レッドウッド検査サービス(RIS)によって開発・出版されたものです。この検査機関はALSCの認定を受け、NGR、RIS、WCLIB、WWPAの等級規則に準拠した木材と共に、機械強度規格材の監査も行っています。
カリフォルニア・レッドウッド協会(CRA)の等級および検査部門がRISで、主な業務はRISレッドウッド等級の高水準と高品質の維持にあります。これに加え、レッドウッド材の利用促進、製材メーカー、設計会社、建設会社への技術情報とサポートの提供も行っています。
国際市場の顧客向けサービス
これらの格付機関は米農務(USDA)の動植物衛生検査サービス(APHIS)の認可を受け、EUなどの諸外国が要求する乾燥窯での熱処理の証明書、並びに樹皮の剥離および防虫管理の証明書を発行します。リクエストに応じて、会員企業が出荷した木材の等級と数値の精度を認証する検定証も提供します。結果に異議のある場合は、世界中どこでも再検査を行うことができます。
含水率20%以下であることを認証する、乾燥窯での乾燥証明書も提供しています。
これに加え、特定の国が要求するUSDA植物衛生認定書の取得に備えて、企業のために文書を準備する権限も与えられています。
4つの格付機関すべてがALSCの認可を受け、日本向けの構造用木材に対するNGR準拠の等級づけと等級スタンプを監査しています。これらSEC格付機関は機械強度規格の木材、並びに外見による等級を与えられた構造用ディメンション・ランバーの等級スタンプ・サービス提供において、日本の国土交通省の認可も受けています。
さらに日本政府は、建設現場に直接出荷される構造用製品にJAS(日本農林規格)の保証マークを押す権限を持つWWPA-JAS製材所において、WWPAが等級づけ監督を行うことも認めています。
外観による等級が与えられた木材の裏面や端にはスタンプが押されていることがありますが、美しさを保つための木材には直接スタンプを押す必要はありません。但し商業上の理由から、出荷製品に等級に関する情報を記入した書類を添えることが義務づけられています。
構造材の等級スタンプに関する要求事項は事情が異なり、エンジニアリングと建築における利用を考慮した設計値を割り当てています。設計値は強度と性状を数値で示したものであり、各等級がある特定の用途に適していることを証明する厳しい検査基準によって算出されます。このように設計と建築を監視する建設条例その他の規制事項は、構造材製品に明確な等級スタンプを押し、認定済みの登録商標をつけるよう義務づけています。
127mm x 127mm以上の大断面の木材を例外として、ほとんどの等級スタンプには以下5つの基本項目が含まれています。
1. 認定マーク
等級づけ格付機関の登録商標です。その格付機関の品質管理規格を満たしていること を証明するものです。
2. 製材所の証明
木材を加工した製材所を記したもので、会社名または製材所番号のいずれかが明記さ れています。必要があればいつでも等級づけ格付機関に連絡し、該当する製材所を識別することができます。
3. 等級呼称
等級、番号、または略号が表示されています。
4. 樹種の証明
特定の樹種、または樹種の組み合わせを示したものです。
5. 含水率および乾燥状態
製材所で表面加工された時点の含水率と乾燥状態が示されています。
(KDは乾燥窯での乾燥を意味します)。
- MC15またはKD15
- 含水率最大15%
- S-DRYまたはKD
- 含水率最大19%
- S-GRN
- 乾燥窯で乾燥していないもの
素材の特性と加工上の欠点

裂け目のある節
等級は、種類、サイズ、木目の緻密さ、1つの木材におけるすべての特性と欠点の数と位置など、一連の複雑な基準に基づいて決定されます。
素材の特性と欠点は以下の方法で評価されます。
- 各等級と樹種別に設定された等級規則の制限と照合しながら、さまざまな特徴と欠点の総合効果を視覚的に判定した上で適切な等級を指定します。大部分の木材製品は視覚的検査によって等級がつけられます。
- 高度な最新技術を駆使したコンピュータ等級機器によって、木材の特性と欠点をデジタル方式でスキャンした後、等級基準に則して電子的に計算します。
- 機械強度規格(MSR)の対象になる木材は、強度測定器を用いて非破壊検査を行い、総合的な特性と欠点による影響を測定します。 MSR等級は、構造設計を容易にするため数値で示されます。