高性能のダグラス・ファー製品は、多層建築や構造計算材への応用に適しています。

ダグラス・ファー/Douglas Fir
ダグラス・ファーは、北米大陸において、コースタル・レッドウッドに次いで2番目に樹高の高い樹木です。平均的な高さは45mから60m、直径は600mmから1,850mmになります。北米の針葉樹の全産出量の5分の1を占め、1,400万ヘクタールにわたり、生育しています。
通直な木理で適度な重量があり、米国西部の針葉樹種の中では最も強度が高い、人気のある樹種です。木材自体はほんのりと赤みがかった色ですが、辺材は通常明るい麦わら色、心材は淡い赤黄褐色をしています。
その外観により、建具、パネル、キヤビネット、床、窓、クラッディングなどに好んで使われます。強度が高く、木理が通直で加工し易いことから、メタルプレートコネクタートラス、枠組、橋梁、ヘビーティンバー部材などの構造用で多岐にわたって使用される優れた木材です。
ダグラス・ファー産出量の分布
カスケード・クレストの西側からワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州北部の太平洋に至る地域で産出されるダグラス・ファーは、「海岸部ダグラス・ファー」として知られており、等級スランプでは「DF」で通っています。
「内陸エンパイヤ」の北部地域に位置するカスケード・クレストの東側では、ダグラス・ファーに混じってウェスタン・ラーチ(ラリックス・オクシデンターリス)が生育しています。両樹種は外見、特質が類似しているため、構造材製品において混合されるということがあります。ダグラス・ファー/ラーチという結合樹種として販売され、「DF-L」の等級スタンプが付けられます。
量は少ないものの、アリゾナ、コロラド、ネバダ、ニューメキシコ、ユタの各州でもダグラス・ファーが産出されます。これらの製品はダグラス・ファー・サウスと分類され、「FD(S)」または「DFs」の等級スタンプが付けられます。
物理的および力学的特性
“特性の比較”ページ参照。
構造用に等級づけられた製品
構造用製品
建築家や構造技師が最良の構造材を探す場合、彼らが最初に選ぶのは決まってダグラス・ファーです。その優れた強度・重量比は世界中で認められており、釘による保持力に優れています。優れた性能は風、嵐、地震などにもよく耐えることが証明されています。
ダグラス・ファーは曲げにおける極度の応力、木目に平行して働く引張り応力、水平せん断力、木目に直交して働く圧縮応力、木目に平行して働く圧縮応力など、その強度特性において、米国西部産針葉樹の中で最高の比率を誇ります。
ダグラス・ファーはまた、北米の針葉樹の中で最高の弾性率(ヤング係数)を有しています。これは1枚の木材のたわみの荷重に対する比率であり、床などの水平なシステムを設計する際に考慮に入れるべき剛性の高さを反映するものです。ダグラス・ファーはしばしば4、5階建ての木材建築物に利用されます。
これらの物理的作業特性、そして芯材の耐性と寸法の優れた安定性のため、世界中の建設業者がダグラス・ファーを住宅、軽量商業建物、多層構造、工業用建造物の構造材として好んでいます。ダグラス・ファーは接地して、または地中で使用するため圧力注入加工により防腐加工を施すことが可能です。
米国のディメンション・ティンバー
- 公称寸法
- 厚さ2~4インチ×巾2~4インチ
(表面加工・乾燥済み - 厚さ38~89mm×巾38~89mm)
(表面加工済み・未乾燥 - 厚さ40~90mm×巾40~90mm) - 軽量枠組構造材
- 最も強度を要する設計、加工システム、トラス、積層材、多層プロジェクトに適しています。
- 軽量枠組材
- 壁枠組、上枠、下枠、ころび止め、ブロッキングなど一般的な枠組に適しています。
- 公称寸法
- 厚さ2~4インチ×巾2~14インチ
(表面加工・乾燥済み - 厚さ38~89mm×巾38~337mm)
(表面加工済み・未乾燥 - 厚さ40~90mm×巾40~343mm) - スタッド級(たて枠級)
- 垂直の使用のみを意図した、壁の枠組みに理想的な部材。
- 公称寸法
- 厚さ2~4インチ×巾5インチ以上
(表面加工・乾燥済み - 厚さ38~89mm×巾38~337mm)
(表面加工済み・未乾燥 - 厚さ40~90mm×巾127mm以上) - 構造用根太および平板(ストラクチュラル・ジョイスト・アンド・プランク)等級
- 床、天井根太、屋根の垂木、頭つなぎ、梁、トラス、一般枠組など構造的利用に適しています。
スペシャル・ディメンションティンバー
- 機械強度規格(MSR)材
- 機械的に強度や接合能力が測定された規格で、トラスその他の設計加工材用に用いられます。
- 構造用集成材
- 縦継ぎ材(フィンガージョイント)など。サイズと等級が同じならば、一般のディメンションティンバーと同じように使えます。すべての米国標準建築基準において、使用が認められています。
構造用デッキ材/床下張り用材
- 公称寸法
- 厚さ2~4インチ×巾4インチ以上
(表面加工済みの「乾燥した」または「MC15」のみ - 厚さ38~89mm×巾89mm以上)
主に工業・商業用の屋根または床材として使われます。「屋根デッキ」級としても知られています。屋外や裏庭のデッキでの使用は意図していません。標準パターンは38、64、89mm厚のものがあります。さねはぎ加工(T&G)され、V型あるいは丸型の縁取りがされています。その他のパターンも厳しい建築的要請に応えるよう配慮されています。2つの等級(WCLIBおよびWWPAの規則)があります。含水率19%(S-DRYまたはKD)または15%(MC15またはKD15)に加工されます。ダグラス・ファーのファクトリー等級の床は表面がなめらかで均質に仕上がり、荷重をかけて連続使用しても、ひび割れやとげを生じることはありません。
大きなサイズ
ダグラス・ファーは、管理の行き届いた森林地から大きなサイズの木材がとれる数少ない樹種の1つです。これらの製品はS-DRYと指定される場合もありますが、未乾燥で出荷される場合もしばしばあります。荒挽きのまま、あるいは4面にブレナー掛け(S4S)を施されることがあります。これらの製品は繊維の堅さ、木目構造の細かさ、および強度で知られています。加えて、こうした“ヘビーティンバー”もまた、米国その他の標準建築基準に準拠し、優れた耐火性の等級を与えられています。
- 梁および側げた
- 厚みが公称5インチ(公称125mm)以上、巾が厚みより2インチ(公称50mm)以上広い。
- 柱および大断面材
- 厚みが公称5×5インチ(公称125×125mm以上)、巾が厚みより2インチ(公称50mm)未満広い。


構造デッキ級は、(主に天井において)見えるように使ったり、あるいは床や下張り床として使うことができます。

ダグラス・ファーは多くの場合、特に床や屋根のシステムに必要とされる高い剛性を提供します。高い等級のものは、エンジニアードウッドとの併用によって何ものにも負けない性能を発揮し、しかも経済的でもあります。
外見用に等級づけられた製品
外見目的の等級
ダグラス・ファーは、豊かなビジュアル・クオリティ、さらに期待通りの素晴らしい技巧や仕上げができる点が設計者に好まれています。特に柾目が見えるように製材した時、魅力を発揮します。ダグラス・ファーには節無し、またはほとんど節無しの製品があり、西部地域の長期輪作の商業用森林地から産出されます。
外見により等級づけられた製品には、絶妙に美しいものから最も実用的なものまで、幅広く揃っています。等級の決定には、色、木目模様、肌理、節のサイズ、タイプ、品質、そして加工水準のすべてが重要な要素となり、等級ごとに許容できる特性が定義されています。仕上げ大工、家具職人、キャビネット職人による寸法の安定性に対する厳密な要求を満たすため、最高級品では含水率が注意深くコントロールされています。
ダグラス・ファーの明るいバラ色がかった色は、紫外線にさらされると次第にその濃さを増し、まっすぐの美しい木目模様によって引き立てられます。繊維が堅いので金物がしっかり固定され、機械を使えば、見事になめらかで光沢のある表面が得られます。乾燥したダグラス・ファーは、縮み、膨張、くぼみ、ゆがみ、たわみ、ねじれなどを生じることなく、その形やサイズを保持します。
こうした特質から、ダグラス・ファーはあらゆるタイプの化粧枠と建具、例えばはなかくし、ドア、造作建具、窓、ドアかまち、炉棚、階段、巾木に理想的な樹種です。パターンを使った製品も可能です。
単一板材を使ったパネリングや巾はぎしたベニヤなどに使われた時、ダグラス・ファーの美しい外見は目に明らかです。多くの場合、パネリング製品の等級は、基準となる板材の等級を反映しています。許容できる特性に対しても同様の規定を固持します。
ダグラス・ファーは透明の上塗り塗料、透明ラッカー、ニス、オイル、明るいまたは艶消しのステイン、塗料、ペイント、そしてエナメルまで、幅広い仕上げ剤と良く馴染みます。
最高級の外見に与えられる等級は以下の通りです。
- 輸出「R」リストの「クリア」等級
(「R」リストの規則) - 「No.2クリア & BTR」
「No.3クリア」
「No.4クリア」 - 「セレクト」等級
(WWPAの規則) - 「B & BTRセレクト」
「Cセレクト」
「Dセレクト」 - 「インダストリアル・クリア」等級
(WCLIBの規則) - 「B & Btr」
「C」
「D」 - 「フィニッシュ」等級
(WWPAの規則) - 「スーペリア」
「プライム」
「Eフィニッシュ」 - 「フィニッシュ」等級
(WCLIBの規則) - 「C & BTR」
「D」
ダグラス・ファーの中で、これら最高級の外見に与えられる等級に相当するのは、節無し、およびほとんど節無しの製品です。これらの木材は高価ですが、絶妙な美しさが得られることから、目の肥えた買い手に好まれています。しっかりと加工され、求められる含水率レベル(通常KD15%)になるよう注意深く乾燥されます。柾目、板目のどちらでも指定できますが、特に指定されていない場合は、柾目、板目が混じった形で出荷されます。最高級の外見が要求される内装用トリミング、家具、パネリング、収納家具、キャビネットなどに推奨される製品です。
床は、驚くほど激しい使用に耐えなければならないため、適した樹種はあまり多くありません。しかし、ダグラス・ファーは仕上げが良く馴染み、極度の磨滅に対しても外見の美しさや水平さを保ち、ひび、損傷、とげに対する抵抗力も優れています。ダグラス・ファーの床材は公称1×4インチ(実寸19×89mm)で、長さは標準1,220mm以上です。床材はさねはぎつきに加工され、どの等級にも仕上げることができますが、床材用の特別等級としては「C & BTRフローリング」級があります。柾目を指定することもできます。
用板材の等級は以下の通りです。
- 輸出「R」リストの「マーチャンタブル」等級 (輸出「R」リストの規則)
- 「No.1マーチ」
「No.2マーチ」
「No.3マーチ」 - 「コモン」等級
(WWPAの規則) - 「1コモン」
「2コモン」
「3コモン」
「4コモン」
「5コモン」 - 「ボード」等級
(WCLIBの規則) - 「セレクト・マーチャンタブル」
「コンストラクション」
「スタンダード」
「ユティリティ」
「エコノミー」
汎用板材の等級では、様々な節、特質、欠陥が容認されています。多様な寸法および品質の製品が簡単に手に入りますが、厚さ公称1インチ、表面加工後の実寸が3/4インチ(19mm)のものが大部分です。使用する場所の条件に応じて、それぞれに適した等級があります。例えば、コーニス、したば、はなかくしなどで木材が目に触れる住宅や軽量商業建物か、それとも塀、箱および輸送用木枠か、あるいは下張り床、屋根、壁下地、およびコンクリート型枠などの一般建設目的かによって、選ぶべき等級は変わります。
「セレクト・マーチャンタブル」、「No.1マーチ」、「No.2マーチ」、「1コモン」、「2コモン」、「コンストラクション」など、最高級の等級は、しっかりと亀裂のない節を備え、極めて洗練されています。これらは節のある素材で美しい外見が求められる場所、例えば、棚材やパターンのある外装材やパネリングなどへの使用を意図した等級です。最も等級が低い製品は、経済的に節約することが基本条件となる工業建設や公益施設での用途に使われます。

柾目のクリアなダグラス・ファーは、様々なタイプの家具に適しています。

ダグラス・ファーは接着剤が良く効き、金物をしっかり固定し、動きによる損傷、磨滅、きしみがないことから、人気のある樹種です。

「特選デッキング」や「特選デックス」など、最高級の構造用デッキング製品の洗練された美しさが、このむきだしの天井にいかんなく発揮されています。
ドアもダグラス・ファー製です。
工業用および再加工された製品
工業用等級は集成材用材(集成材梁に適した木材)、ストレスレイテッドボード(設計値が指定された木材)、鉱業用木材、足場用の板材、基礎材、鉄道の枕木などがありますが、これだけとは限りません。
ダグラス・ファーは高性能を求めるユーザーの需要に幾度も応え、世界中の工業関係者から賞賛を浴びています。工業用製品には、特別な最終用途のための構造的および非構造的な等級があります。
構造的等級には、鉱業用木材、足場用の板材、基礎材が含まれます。トラス構造や型枠作り、トンネル掘り、構脚、橋、スタジアム、倉庫、貯蔵施設、工場などは、すべてダグラス・ファーに依存しています。この樹種は機械的な磨滅や科学的な反応に対する抵抗力が極めて高いため、不活性素材を長期間過酷な状況に置くことが要求される大おけ、タンク、コンテナー、用水路、溝などの工業用コンポーネントによく使われます。
ダグラス・ファーはフリーウェイの防音壁やハイウェイのガードレールの木材としても選ばれ、北米の鉄道線路のほとんどで使われています。この西部産樹種は、鉄道貨車の内張りや線路支持材から枕木や交差部板材まで、非常に困難な仕事に長持ちする解決法を提供します。
ストレスレイテッドボード(設計値が指定された公称寸法1インチの板材製品)は、軽量トラス、水平支持材、垂木、プレハブ家屋用ボックスビームなどの用途に適した製品を提供しています。
集成材用材は厚さが公称2インチ(実寸38mm)以下、巾が3インチ(実寸64mm)以上の板材で、いくつかの等級があります。これらの等級では、構造上および視覚上の特徴が査定されます。Eレートの等級は、機械で、長いスパンで、平に置いた場合のヤング係数がテストされます。これらは長い面にそって重ね、接着剤で接合されます。構造用集成材は様々な巾や厚みで、未仕上げかプレナー掛けかを指定することができます。また、設計上の基準に合わせて、例えば、教会や橋やスタジアム用のエンジニアード・アーチなど規格外の形状とすることも可能です。
防腐剤を加圧加工したダグラス・ファーを使って設計加工した圧力集成材の橋は、強く耐久性に富む上、コスト効率が高く、短期間で建設できます。また、周辺河岸の生態系に対する建設のインパクトもしばしば緩和されます。
特殊な非構造的等級には「ファクトリー・アンド・ショップ」等級の豊富な製品群(以下で記述)が含まれます。その他、乱ぐい、ラス、目板、段切り、といなどもここに含まれます。
再加工用の製品
「ファクトリー・アンド・ショップ」等級はモールディング用材(WWPAおよびWCLIBの規則)、ショップ材(WWPAおよびWCLIBの規則)、ドア用材(WCLIBの規則)、フラッシュドア用材(WWPAの規則)、ドア抱き柱および上枠用材(WWPAの規則)、クリア(輸出「R」リストの規則)、マーチャンタブル(輸出「R」リストの規則)などがありますが、これだけとは限りません。
「ファクトリー・アンド・ショップ」等級の製品は主に、ドア、窓、家具、枠、モールディング、箱に再加工するために製造されます。特に、建具・木工用にクリアな部材を取り出す場合に最適です。外見の美しさと共に堅さが要求される場合、ダグラス・ファーは多くのより柔らかな広葉樹にひけをとりません。この等級ダグラス・ファーは機械で簡単に表面をなめらかにすることができ、接着も簡単で、金物の保持力があります。動きや振動による摩耗にも強いものです。
ダグラス・ファーの「ファクトリー・アンド・ショップ」製品は通常、製材所から再加工業者に直接、大量に輸送されます。アメリカ西部の製材所の多くは、買い手/売り手間の合意に基づき、海外顧客の特別な再加工用件に合わせて便宜を図っています。

ダグラス・ファーのまっすぐで均一な木目と高い密度により、絶妙な美しさと高性能を併せ持ったドアが生まれます。

「ファクトリー・アンド・ショップ」製品は、針葉樹の「経済的な節無し材」としても知られており、ドア、窓、シャッター、様々な種類のキャビネット、収納家具、家具に重宝します。

加圧加工された防腐剤で加工済みのダグラス・ファーを使った近代的な橋は、環境に与えるインパクトが少なく、コスト効率の高い解決法を提供します。
※寸法に関する注記:特別な指定がない限り、本ウェブサイトに登場するメートル法の数値は、アメリカで実際に使われている表面加工済み寸法のおおよその換算値です(1インチ=25.4mm)。